アリババの強みを活かした驚きの中国展開とは
中国のオンライン販売で圧倒的な強みを持つアリババが全国へ宣戦布告!
征服のターゲットは中国の近郊小売り商圏でした。
アリババはEC最大手であり、オンラインでの活躍が目覚ましいが実は実店舗小売りも強いです。
また、それを支える国内最大級の強大な物流網を持っています。
その物流パワーは他の物流業者を凌駕していて、徹底された効率化により夜0時前にネットで注文したものが朝には届いているほどと言われています。
都市部ではアリババ系のスーパー「盒馬(フーマ)」が大量に進出していて、コストコのような倉庫型店舗からコンビニ級の店舗まで、ほぼすべての小売り業態を支配しています。
日本ではイオンをイメージすれば分かりやすいかもしれません。
中国からアリババが本気で攻めてくる?
そんなアリババが、唯一残されたと言っても過言ではない地方へも進撃を開始したのです。
その”宣戦布告”は今年7月7日に行われました。フーマの新業態として「盒馬隣里(フーマNB)」を展開すると宣言したのです。
日本でも、イオンが地方に大規模店舗を建ててその町商の店街が衰退する例があります。
ところがオンライン大国である中国のアリババは一味違いました。
アリババが地方に送り込んだ戦力は大量の人員ではなく、ほぼ無人の店舗だったのです。
このフーマNBには商品が一切陳列されておらず、そこで買うこともできない。すべてオンラインでのみ購入可能です。
利用者はアリババのアプリから商品を購入する。すると指定の商品がフーマNBに送り届けられる。利用者はそこで受け取りだけを行う。
そう、フーマNBとは単なる受け取り口。サービスステーションとなっています。日本でも「PUDO」という宅配ボックスが似たサービスとして存在します。
アリババの強み:一見すると最強そう?
通常のオンライン販売と違う点は、圧倒的な配達速度と生鮮品のラインナップです。
アリババは中国本土では店舗数において膨大な数がそのまま強みとなっております。
アリババの持つ豊富な店舗から注文すれば、数時間後には新鮮な食品がフーマNBに並びます。
つまりコンビニの中に巨大モールを超える生鮮食品が揃っているようなものです。
地方で自動車で渋滞に苦心して、駐車場を奪い取り、なんとか入店した後にレジで並ぶ。そしてようやく手に入れられる生鮮品はもうヘタっている。なんていう光景はありません。寝る前にアプリで注文し、翌朝フーマNBに行けば、注文した商品が用意されています。
決済も要らず、ただ受け取るだけで並ぶことは一切ありません。
ありとあらゆる品揃えから選ぶことができ、最も安い価格で手に入れられます。
食品はマーケティングの区分でいう「最寄り品」、つまり近所で簡単に買えることが至上命題であるものですね。よほどでもない限り玉ねぎ1つのために電車を乗り継ぐことはありません。しかしイオンに行くために実際は「買回り品」つまり耐久消費財のように商品を手に入れるために移動や購入をかなり苦労しているところがありませんか。
フーマNBなら移動しなければ買えない生鮮食品ですら地方の最寄りで購入できます。
中国本土でのアリババの戦い
さて、一見完璧なフーマNBを展開するアリババですが中国では意外にも苦戦中です。
デジタル大国である中国では、既に他のグループによって展開されています。アプリを1つ世に出すために、札束の殴り合いをしないと認知すらされない中国のプロモーション事情を考えると、後発というだけでかなりのハンディキャップがあります。
アリババの持ち前の強みとなる店舗数も中国本土ではやっと戦場に立てるレベルなのでしょう。
実店舗の面では完全に市場を支配できているとは言い難いようです。
このような事前購入のサービスを中国では社区団購(シャーチートワンゴウ)といい、元々は地方店舗で組んで買い置きをするもので、日本の生協と同じようなシステムでした。
それがコロナ禍を契機に企業家たちによってビジネス化された経緯があります。
このシャーチートワンゴウの現在の支配者は
多多買菜
美団優選
橙心優選(※滴滴グループ)
の3社で、「新三団」と言われています。
この新三団は旧三団と言われる元から同様のサービスを行っていた企業をマネーパワーで駆逐して成り上がった集団でもあります。実際に旧三団のうち1社は経営破綻させられています。この3社に対して、アリババは攻勢を仕掛けようとしているのです。彼ら自身が他社のお株を奪ってきただけあり、征服は不可能ではありません。
そうはいうものの、この新しい3社はかなり強力なのは間違いなさそうですね。
アリババの懸念
アリババのフーマのうち、日本ではイオンが展開する「まいばすけっと」あたりに相当する「フーマミニ」という店舗がありますが、こちらの展開が遅れています。フランチャイズ加盟者が思うように集まらず、100店舗展開目標のうち20%も達成できていなかったのです。
大規模店舗に多少の強みがあれど、小型店舗展開や地方浸透では黄色信号がともりました。
アリババの強みは品揃えと物流力。新三団をもってしても「夜注文、朝到着」は不可能で、現状では夜に注文すると翌日の夕方前に届くのが精いっぱいなところがあります。日本ではそれでも早いほうではありますが、生鮮品の完全オンライン注文・決済となると、やはり速度が重要で、ネットで注文するなら多少クルマ出してもスーパーに行くという選択を取ってしまいます。
そこでアリババは「夜に頼めば次の日の昼の料理に間に合う」を推しています。
こうした強みを持ってなお、簡単に独占出来ないのが中国市場の厳しい部分です。
中国と言えばライバル企業同士の仁義なきつぶし合いが起こることで有名。アリババが正式に宣戦布告を行ったこの分野で、命運はどう転ぶのでしょうか。
アリババの日本へ展開はあるのか
今のところ、日本への具体的な展開は予定されていません。ただ日本の現状を見る限り、生鮮品のオンライン注文やECは「穴場」ではありそうです。
中国からアリババが強みを活かした小売り展開を日本で行うか、日本でこの分野に興味を持って本気で仕組みを構築する企業が現れるか、どういう展開になるかは分かりませんが、日本でも通用しそうな内容ではありそうです。