日本で最もキャッシュレスに近い町? 北海道東川町にインタビューしてきた
はじめに
お久しぶりです。國藤です。
久々にコラムを更新するキッカケになったのは、以下の記事を見たことです。
“日本にもデジタル技術を活用し、最先端の取り組みに挑む小さな町がある。
引用元:日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」4/8号
北海道の東川町だ。人口8328人だが、町民の約8割が「東川ユニバーサルカード(HUC)」というIC式ポイントカードを持つ。”
大変興味深い記事だったのでSNS上でシェアしたところ、すぐに親切な知人が運営元である東川町商工会の方と繋げてくださり、インタビューのお願いにも快く応じて頂けました。
今回、お話を伺ったのは東川町商工会の経営指導員、今野政明さん。
早速、お話を伺っていきましょう。
国からの補助金で短期間の町内普及が可能に
國藤(以下「編」):本日はありがとうございます。
早速ですが、近頃、キャッシュレス化が大変注目されるようになってきていますが、このインフラにあたるICカードという形で、全国でも例がないほど早期に普及させたという点に大変注目していたのですが、その秘訣をお聞かせ願えませんか?
ICカードとなると、リーダーや連動するプリンタなども揃えるとそれなりの出費になり、お店さんの負担が大きいのではないかというのが率直な疑問でしたが。
今野さま(以下「今」):はい。確かにそれなりの費用がかかるものです。全体の予算で3千万円ほどかかったのですが、国や町から補助金の支援※を受け、商工会の自己負担を含めて対応し、商工会の半数以上の商店に、関連機材一式をお渡しすることができました。
編:すると商店さんにとって、端末代の負担は、ゼロな訳ですか?
今:そうですね。
編:なるほど。補助金をうまく活用なさったのが普及のカギだったと言えそうですね。
参考: https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/2016/161209syukyaku.htm
ポイントカードとしての活用法は?
編:ポイントカードということでしたが、どのようにするとポイントが貯まるのでしょうか?
今:東川町内でのお買い物で、100円につき1ポイントが貯まります。
編:(加盟店舗一覧を見て)板金屋さんや建築会社さんもあるじゃないですか!
もしかして、家を建てても1%が貯まるんでしょうか?
上物2000万円かけたら20万円!滅多にない出費ではありますが、これは大きいですね!
今:1回あたりのポイント付与には上限があって、各加盟店によって異なりますが、1万ポイントまでです。
編:流石に、そうなりますよね(笑)。他にはどんな行動でポイントが貯まりますか?
今:行政にもこの端末を置いていただいていて、例えば図書館に来ていただき、端末にカードをかざしていただくと1回につき1ポイント進呈する、といったこともやっています。
貯まったポイントは、どこで使える?
編:貯まったポイントは、どこで使えるのでしょうか?
今:113あるHUC加盟店さまのすべてで、1ポイント1円で使えます。
編:ポイントが使われた場合、加盟店さんへの支払いは?
今:商工会から後日、振り込まれる仕組みです。
編:先ほどのHUC MAPを拝見すると、あまり「チェーン店」さんがいらっしゃらないようですが。
今:そうですね。そんな中でも「ホクレンショップひがしかわ店」さんはユニークな存在で、ポイント発行・利用量も特に多いです。お客さんも海外から語学留学生の利用が多くて、彼らの故郷の調味料ですとか食材を置くようになったりと、東川の特性に合わせてどんどん変化してきています。
編:語学留学ですか!面白いですね!詳しく聞かせてください!
意外な使い道:語学留学生への補助金も!
今:東川には日本語学校があって、そちらの生徒さん全員に、HUCカードをお渡ししています。東川町では留学生の方に対して月に8000円の生活支援をしていて、それを全て、HUCカードのポイントで対応しているんです。
編:日本語学校の生徒さんって、どれくらい、いらしてるんでしょうか?
今:短期と長期あるんですけども、大体200~300名くらいの生徒が通っていますね。
編:東川町で過ごすことで、そのまま東川町で働いたり、住んだりということもありそうですね。
今:そうですね、東川町のことを気に入ってくださり、そのまま住んでいただいたり、起業される方もいらっしゃるんです。商工会の加盟店さんもアルバイトの人手が足りていなくて。そういったところでも留学生の皆さんは活躍されていますね。
編:留学には、どちらの国からいらっしゃる方がい多いですか?
今:韓国、台湾、最近はベトナムですね。ヨーロッパの方々もスキーもお目当てにいらっしゃる方も多いです。
編:中国からいらっしゃる方は、多くはないですか?
今:多くはないですが、いらっしゃいますね。
編:かなり国際色が豊かですね。
今:はい。私も3年前からこちらに転勤のため異動したのですが、外国の方を町内に大勢見かけることにびっくりしましたね。旭川や、その周辺近隣の町と比較しても東川町は大変多いように感じます。
旭川にお住いの方もおりますが、東川にあるコミュニティの話を聞いて、移住される方もいらっしゃるようですね。
編:我々のやっているキャッシュレス化も、人手不足の解消が目的のうち一つなのですが、既に外部から若い方を呼んで地域活性ができているように思えます。素晴らしいことですね!
今後の課題は?
編:今後やっていきたいことですとか、課題に感じていらっしゃることは?
今:まずは、チャージ機能を追加・可能にしたいと考えています。今あるシステムの機能的にはできるのですが、管理機関等への申請ができていなくて。
編:資金決済法の届出※ですかね?
今:そうですね。まだ組織の基盤が十分にできていないので、将来的にはやって行きたいのですが。さらに東川町には鉄道がなく、公共交通機関としてバスが運行されているのですが、そこにバスカードがあって、そういったものとも連携していけるようにしていきたいですね。
編:確かに供託金の準備は大きな課題ですよね。私ども(決済事業者)としても、何とかクリアできるスキームなど用意できれば良いのですが。
今:それから、まだ加盟店等には公開していないのですが、町内や町外、年齢や性別など、HUCがどのように使われたかというデータはかなり蓄積されてきたので、これを商工業振興発展のためのデータとして上手く活用していけたら面白そうです。
編:私たちもその領域は注目しています!今後何かしらお手伝いができそうなことがありましたら、また是非お話の場をください。本日はありがとうございました。
引用元:https://www.s-kessai.jp/businesses/issue_deposit.html
まとめ:東川町はまさに「地方創生の先行モデル」でした
如何だったでしょうか。我々もキャッシュレス化というビジネスをしているのと、今後のビジョンとして「行動データ活用」というものを掲げているので、大変収穫になるインタビューでした。
既にスウェーデンでも労働人口の減少による人手不足が問題となり、それをきっかけに国家をあげてキャッシュレス化に取り組む事になりましたが、これは私たちが住む日本も遠くない未来に向き合わなくてはならない課題です。
北海道の東川町では、首都圏よりも先にその課題と向き合い、語学留学生を招致することで人手不足の解消と地域の活性化を同時に解決する方向に向かっているように感じられ、このような流れがやがて首都圏にもやってくるのは間違いないだろう、と強く感じることができました。
この流れに対応していく自治体さまや事業会社さまのお役に立てるよう、今後もサービスの拡充を図ってまいります。詳しくは、以下の資料をご覧ください。